一枚の着物が出来るまで

(1) 下絵・草稿
図案柄や全体の配置を構想し、下絵を模造紙に描きます。
着物が出来上がった状態を頭に入れて構想を練り、縫い合わせの際に柄がぴたりと合う様に描かれます。
物制作の8割がこの時点で決まってしまう、最初の大事な行程です。
(2) 糊置き(糸目糊置き 伏糊置き)
「糊置き」とは、手描き友禅で彩色する際に、隣合わせる色が交じらない様に堤防になり、地染めで染まらない様、白くラインを残す作業です。
<糸目糊置き>
下絵・草稿の上に着物生地を乗せ、下から電気を当てて透かしながら模様輪郭にそってゴム糊を絞り置いてゆきます。
円錐状の筒先から出る糊線が糸の様に見えるため「糸目糊置き」と呼ばれます。
後で地染めした際に糸目糊置きされた部分は染まらず、白く枠状に残ります。
<伏糊置き>
着物生地全体の地染めをする際に、糸目糊置きされた部分の内側が染まらない様に、柄全体に糊を伏せる作業です。
(3) 地染め
(2)で糊置きされた着物生地全体を染める染の行程です。
全体を刷毛で均一に、斑なく染めるには高い熟練の技術が求められます。
染めた後、一度蒸されます。
(4) 友禅彩色
(3)で地染めされたあとの水洗いで伏糊は落とされ、工房に戻されます。
糸目で残された白く括られた枠の内側を、筆で細かく彩色してゆきます。
友禅染めで色を塗ることを「色を挿す」と表現します。染料は原色5〜6色を混ぜ合わせ、様々な色合いに調合し、全体の雰囲気を考えながら根気強く色が挿されます。
糸目糊置きのラインから染料が滲まない様に彩色するには熟練の技術が必要です。
(5) 仕上げ(金彩・柄起こし)
(4)で彩色された生地は「蒸し水元」の専門の職人に渡され、一度蒸して色を定着させた後、水洗いされて工房に戻ってきます。
その後、花の蕊や模様を金で華やかにくくり、華やかに全体の仕上げがされます。金彩専門の職人により金が入る場合もあります。最後に墨で柄の枠取りする「柄起こし」がされると、立体感や奥行きが出て柄が起きてきます。
(6)お仕立て
(5)は専門のお仕立て職人へ渡され、約1ヶ月ほどで一枚の着物が出来上がります。